自選句。 蝉丸も小町もとられ負け歌留多 益弘
自選句。 虚しさのその大きさの雪仏 益弘
自選句。 ワインロゼ互みに酌みて姫始 益弘
自選句。 ひそやかに一歯喪ふお正月 益弘
自選句。 一服の紫煙のゆくへ除夜の星 益弘
自選句。 倖せか余白の多き日記果つ 益弘
自選句。 にんげんを篩にかけて年歩む 益弘
自選句。 炬燵居の脳の大部を使はざる 益弘
自選句。 年の瀬をやをら過りぬ霊柩車 益弘
自選句。 冬深し標本室の千の蝶 益弘
自選句。 若き日の悔いが犇く冬銀河 益弘
自選句。 猪鍋の煮え立つ比叡颪かな 益弘
自選句。 初雪は水子のために降りにけり 益弘
自選句。 わがために紅き花買ふ寒暮かな 益弘
自選句。 オロシヤの舶を怖れず冬かもめ 益弘
自選句。 顔見世や名代の蕎麦もお目当てゞ 益弘
自選句。 冬の蝿存ふるとは咎に似て 益弘
自選句。 煮凝や町家の冷えも懐かしく 益弘
自選句。 賀状書き了ふ皓々と月ありぬ 益弘
自選句。 風花やはんなりといふ京言葉 益弘
自選句。 密やかにこひびとと逢ふ年忘れ 益弘
自選句。 猟銃に色気の如きもの光る 益弘
自選句。 空箱の中に空箱十二月 益弘
自選句。 雪の京古きキネマを視る如く 益弘
自選句。 御仏のまへ冬帽子脱ぎたまへ 益弘
自選句。 京を見て鳥の眼となる屏風かな 益弘
自選句。 もう一人詰めれば坐れおでん酒 益弘
自選句。 この路のみるみる銀杏落葉かな 益弘
自選句。 賜はりし小春日和を死ぬるなり 益弘
自選句。 日向ぼこおなじ日向を鳩あるく 益弘