益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

2005-01-01から1年間の記事一覧

黄落

きょうの自選句。鉛筆の線走らせて黄落す 益弘

神の留守

きょうの自選句。一対の白狐の視線神の留守 益弘

秋風

きょうの自選句。秋風や顔に七つの穴がある 益弘

文化の日

きょうの自選句。ごきぶりの尚も出てくる文化の日 益弘

行く秋

きょうの自選句。惜秋の掌を欄干に置きにけり 益弘※欄干=おばしま

十一月

きょうの自選句。遠のくのみ十一月の白き雲 益弘

冬隣

きょうの自選句。歳時記の表紙のほつれ冬隣 益弘

林檎

きょうの自選句。愛さねば林檎のすぐにカーキ色 益弘

秋燈

きょうの自選句。旧仮名にやうやう慣るゝ秋燈 益弘

菊人形

きょうの自選句。迷子泣いて菊人形にもの申す 益弘

虫籠

きょうの自選句。虫籠の虫の出られぬ扉かな 益弘

牛膝・いのこずち

きょうの自選句。好きだから意地悪をせしゐのこづち 益弘

漆紅葉

きょうの自選句。狂はねば成らざる漆紅葉かな 益弘

惜秋

きょうの自選句。消閑のはた惜秋の茶房かな 益弘

蔦紅葉

きょうの自選句。蔦紅葉かかる館に栖まひたし 益弘

紅葉

きょうの自選句。かのひとを思ひつめゐる紅葉かな 益弘

木の実

きょうの自選句。亡き母の服より出でし木の実かな 益弘

黄落

きょうの自選句。老けてゆく夢の中にも黄落し 益弘

夜学の子

きょうの自選句。夜学の子遅刻はすれど休まざる 益弘

祇園・鍵善良房

きょうの自選句。ほつこりとして鍵善に秋の昼 益弘

秋の雲

きょうの自選句。美しき数式はあり秋の雲 益弘

冷ゆ

きょうの自選句。右手より左手冷ゆる過去のあり 益弘

帰燕

きょうの自選句。日時計の影鋭角に帰燕かな 益弘

葡萄

きょうの自選句。地球まろし葡萄一粒づつまろし 益弘

秋麗

きょうの自選句。そら色の水みづ色の空秋うらら 益弘

秋冷

きょうの自選句。美しき薬を飲みて冷ゆるなり 益弘

秋風

きょうの自選句。秋風やひとつ喪ふ永久歯 益弘

有りの実

きょうの自選句。有りの実を命少なき母に剥く 益弘※「有りの実」は梨のこと。 「なし」という音を忌みてこう云うこともある。

案山子

きょうの自選句。母方の祖父に似てゐる案山子かな 益弘

熟柿

きょうの自選句。日本の色となりたる熟柿かな 益弘