益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

2004-11-01から1ヶ月間の記事一覧

北風

きょうの自選句。北風や耳は哀しき岬なる 田畑益弘

冬眠

きょうの自選句。冬眠なき人類に鳴る目覚しよ 田畑益弘

冬籠

きょうの自選句。冬籠る万年床の歎異抄 田畑益弘※歎異抄

短日

きょうの自選句。短日の電車の中を歩く人 田畑益弘

白鳥

きょうの自選句。白鳥の翔ぶ渾身の頸であり 田畑益弘※言うまでもなく鳥は翼で飛ぶ。それは当たり前のこと。しかし、白鳥の飛翔を見ているとあの長く優雅な頸が、その飛翔を全て司っているように思える。白鳥は、頸で飛んでいるのだ・・・そんな一句である。

枯菊

きょうの自選句。枯菊の意志を通して枯れおほす 田畑益弘※残菊から枯菊へ、日数をかけて菊は枯れてゆく。花を散らすこともなく真直ぐに立ち尽くしたままで。いにしえより我々日本人は枯れ果てた菊の姿にも風情を感じ取ってきた。

冬の蝿

きょうの自選句。冬蝿のまぐはひを見し都心かな 田畑益弘

筆硯(ひっけん)

きょうの自選句。筆硯の一日なりし白障子 田畑益弘

鵙の贄

きょうの自選句。鵙の贄人目に触るゝ高さにて 田畑益弘

銀杏落葉

きょうの自選句。銀杏いま大団圓の落葉かな 田畑益弘

喪中欠礼

きょうの自選句。喪中欠礼と云ひ冬がやつてきた 田畑益弘※初冬は「喪中欠礼」の葉書が届く時期である。喪中の葉書を頂くと、故人を改めて思い起こししみじみとした気分になるものだ。「母の死」「父の死」で私も二度「喪中欠礼」した。年賀を辞する寂寥ととも…

きょうの自選句。凩のあと星屑の吹き溜まり 田畑益弘

虎落笛(もがりぶえ)

きょうの自選句。あめつちの乾び切つたる虎落笛 田畑益弘

外套

きょうの自選句。外套やこころの深手匿すべし 田畑益弘

冬の蝶

きょうの自選句。供華翔ちて別なる供華へ冬の蝶 田畑益弘

眠らざる火の山

きょうの自選句。眠らざる火の山一つ山眠る 田畑益弘※浅間山がまた中規模の噴火、というニュースを題材に詠んだ。

蒼き川

きょうの自選句。底冷の底を奔りて蒼き川 田畑益弘※「時雨」とともに京都の冬と言えば「底冷」。しかし、ここ数年「底冷」と言うほどの厳しい冷え込みを感じたことがない。暖冬傾向が続いているせいだが、そのうち「京都の底冷」は死語になってしまうかも知れな…

比叡山

きょうの自選句。底冷の紫がかり比叡暮るる 田畑益弘※比叡は比叡山のこと。ここでは「ひえ」と読む。「ひえい暮る」と終止形にするより「ひえ暮るる」と連体形にした方が鮮明であろう。「日枝(ひえ)のやま」比叡山

人参

きょうの自選句。人参を微塵にすれば食ぶる人 田畑益弘※いい歳をしていまだに人参が嫌いである。しかし、この句のように微塵切りにしてあれば、「うっかりと」食べているように思う。これも昨年の一句。

きょうの自選句。熊出でし山にも市制布かれあり 田畑益弘※昨年の作だか、今年は特に「熊災難の年」である。台風禍で木の実が少ない、餌を求めて人里に現れれば射殺される。何も熊は、人を襲おうとして出てくるのではないのだが。哀し過ぎる熊。そして、その哀し…

短日

きょうの自選句。短日の鋏の音が髪を切る 田畑益弘

小夜時雨

きょうの自選句。一本の傘買ふ二人小夜時雨 田畑益弘

枯蟷螂

きょうの自選句。首傾げ蟷螂枯れてをりにけり 田畑益弘

「表日本」「裏日本」

きょうの自選句。日本に裏側のある寒さかな 田畑益弘※「表日本」「裏日本」などと言っていた時期がある。最近は見聞しない言葉だが、われわれの意識の中には今尚残っている。日本の「表側」と「裏側」。その裏側を豪雨が、台風が、地震が相次いで襲った。雪の降る季…

浮寝鳥

きょうの自選句。たまゆらの暮れ色を被て浮寝鳥 田畑益弘

冬隣

きょうの自選句。歳時記の表紙が剥れ冬隣 田畑益弘※冬隣、冬近しと言っても実感の沸かない昨今である。我が家の紅葉もまだまだ薄紅葉の段階。歳時記の季感が後ろへ後ろへずれて行く。しかし、長い日本列島。地方によってはまさに「冬隣」の所があるのだろう。台風…

cogito ergo sum=コギト エルゴ スム

きょうの自選句。霧の中ひとまづ我の存在す 田畑益弘※「我思う、ゆえに我在り」という命題。いわゆるデカルトのコギト(cogito ergo sum=コギト エルゴ スム)から近代の合理的認識は始まった。霧の中、まさに「我思う、ゆえに我在り」である。もっともこの一句…

黄落

きょうの自選句。黄落の水の迅さとなりにけり 田畑益弘

一世(ひとよ)

きょうの自選句。星の一世ちちろの一世吾が一世 田畑益弘

欄干(おばしま)

きょうの自選句。行く秋の欄干に手を置きにけり 田畑益弘