益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

2004-01-01から1年間の記事一覧

地球儀の塵

きょうの自選句。地球儀の塵拭き忘れ大晦日 田畑益弘

冬オリオン

きょうの自選句。わが詩けふ冬オリオンに賜はりし 田畑益弘

数へ日

きょうの自選句。数へ日のなかの一日の霊柩車 田畑益弘※逝く年あとわづか救急車 浅原六朗という破調の異色の秀句がある。それを念頭に詠んだ。年の瀬であれ、正月であれ、死は待っていてはくれない。

小雪

きょうの自選句。日本の風うつくしき小雪かな 田畑益弘※小雪ならこんな優雅なことも言っていられる。大雪、吹雪、しまき、ともなるとこんな句は詠めない。明日は京都南部でも雪が降る、と云う。

青眼の構え

きょうの自選句。天狼へ身は青眼の構へなる 田畑益弘※青眼は正眼とも書く。白眼の対語である。人を歓迎する目つきのことだが、剣道では中段の構え、相手の目に剣先を向ける構えである。尚、「天狼」は大犬座の首星シリウスのこと、代表的な冬星である。

年の瀬

きょうの自選句。年の瀬を斜めに渡る交叉点 田畑益弘

枯野ゆく

きょうの自選句。枯野ゆく自分を探す如くゆく 田畑益弘

湯豆腐

きょうの自選句。湯豆腐や真闇に沈む南禅寺 田畑益弘※京都で湯豆腐と言えば、南禅寺か嵐山である。嵐山は料理旅館の集まる所なので、別に不思議とも思わないがどうして南禅寺界隈なのか?ものの本によると、豆腐作りが禅僧の副業だったと言う。しかし、ではな…

天皇誕生日

きょうの自選句。佳き墨を買ひて天皇誕生日 田畑益弘※昨年詠んだ一句。一般的に「天皇誕生日」や「勤労感謝の日」など長い季語を詠むのは難しい。作り手に許されている字数が極めて少ないからである。十七音にこだわれば作者の裁量は僅か八音のみだ。だが、それ…

脊梁山脈

きょうの自選句。日本の背骨にあたる雪の雲 田畑益弘

枯葉の街

きょうの自選句。枯葉の街よ傘繊くほそく捲き 田畑益弘

北風(きた)を行く

きょうの自選句。北風を行く魔物の金を恃みとし 田畑益弘

大年へ

きょうの自選句。大年へ祷るかたちになつてゆく 田畑益弘

巌となるまで

きょうの自選句。巌となるまで冬怒濤見てゐたる 田畑益弘※注釈の要はないと思うがこの一句は「(こころが)巌となるまで・・・」「(決意が)巌となるまで・・・」といった意である。()内の語を書いてしまえば、駄句となる。お分かりか?

煮凝

きょうの自選句。煮凝も京の町家も減りゆける 田畑益弘

濁流

きょうの自選句。冬ぬくき濁流を見て佇みぬ 田畑益弘

人心(ひとごころ)

きょうの自選句。寒風や変りしものに人心 田畑益弘

冬の月

きょうの自選句。たましひを正対せしむ冬の月 田畑益弘

松葉蟹、越前蟹

きょうの自選句。蟹の朱を蔵してかくも暗き海 田畑益弘※季語「冬の蟹」は専ら食用の海の蟹を云う。京都では「松葉蟹」、北陸では「越前蟹」と云う。単に「蟹」では夏の季語だが、一句全体から「海の蟹・食用の蟹」と判断できれば、冬季の蟹である。さて、まさに…

極月

きょうの自選句。極月の川より海へ出づる魚 田畑益弘

古町片町郭町

きょうの自選句。霙るゝや古町片町郭町 田畑益弘※「古町片町郭町」は「こまちかたまちくるわまち」と読む。古町、郭町は説明の要なし。片町は「片側町」、道の片側にのみ集落のある町のこと。

きょうの自選句。極月やかぶらを磨く京のひと 田畑益弘※「極月」も「かぶら」もともに冬季。こういう句を「季重ね」と言う。敢えて「季重ね」にしているのである。句の成否は読者が判断することである。

暗き治療室

きょうの自選句。しぐるゝや眼科に暗き治療室 田畑益弘※眼科に行かれたことのある人は御存知かと思う。実に暗い部屋があるのだ。眼の写真を撮る、眼に光を当てて診察する等、他の科では考えられないが「暗くなくては出来ない」検査や治療をするからである。昨…

十二月八日

きょうの自選句。十二月八日未明の鵙高音 田畑益弘※「冬の鵙」という季語がある。寒くなってもう余り鳴かなくなった鵙として詠まれることが多い。御存知のように「十二月八日」は開戦日。よって「鵙高音」がよく効く、というのが私の感覚である。「十二月八日…

処女雪

きょうの自選句。処女雪を踏みゆきにけり冥府まで 田畑益弘

枯野

きょうの自選句。太陽を一鳥よぎる枯野かな 田畑益弘

年忘れ

きょうの自選句。忘年会脱け止まり木に一人かな 田畑益弘

冬の月

きょうの自選句。冬月のあたゝかかりし逢瀬かな 田畑益弘

炬燵猫

きょうの自選句。半眼に全て見てをり炬燵猫 田畑益弘

越(こし)の兎

きょうの自選句。月に出て越のうさぎは白兎 田畑益弘※北陸、東北の雪深い地方に棲む兎は保護色で白い。その白兎を「越後兎」と言う。さて、掲句。「越後うさぎは白兎」「越のうさぎは白兎」「加賀のうさぎは白兎」どの表現にしようか?と悩みに悩んだ。昨日の表…