益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

2004-06-01から1ヶ月間の記事一覧

虎が雨・曽我の雨

きょうの自選句。さめざめと虎が雨夜となりにけり吹き晴れてまた思ひ出で虎が雨 田畑益弘※「虎が雨」陰暦5月28日頃に降る雨のこと。「曽我の雨」とも云う。曽我十郎の恋人「大磯の虎」の悲しみの涙だということで「虎が雨」と呼んだ。曽我兄弟の仇討ちが…

蜘蛛の囲

きょうの自選句。大き孤独大き蜘蛛の囲架かりをり 田畑益弘

荒野

きょうの自選句。明易のカジノ出づれば荒野なる 田畑益弘

蛍の夜

きょうの自選句。火遊びの二人にあらず蛍の夜 田畑益弘

白夜

きょうの自選句。街娼の眸(まみ)青ざむる白夜かな 田畑益弘

「産土神(うぶすな)」

きょうの自選句。産土神(うぶすな)の水を守りて源五郎 田畑益弘※「産土神(うぶすな)」は、出生地、出身地のこと。また、その地の鎮守の神のこと。故郷、母郷の水を源五郎が守っていると、見立てた句。しかし実際に守るのは、われわれ人間なのである。壊すのも…

流転

きょうの自選句。わが裸体しづかに流転してゐたり 田畑益弘※「流転」とはとどまることなく変貌し、移ろうこと。生きとし生けるもの、いや命無き物体さえも刻一刻、流転しているのである。時に誰しも、おのれの裸をしみじみと見る。おのれの裸体は決して嘘をつ…

ちから

きょうの自選句。せせらぎに目高の静止するちから 田畑益弘

苔の花

きょうの自選句。業平の老い思ほゆる苔の花 田畑益弘※京都西山、十輪寺。「なりひらでら」とも云われ稀代の色男?在原業平が晩年を過した寺。業平の墓もある。「なりひらかえで」と呼ばれる楓の紅葉季、咲いたり咲かなかったりする老桜の春季、も良いが苔が最…

泳ぐ

きょうの自選句。泳ぎけり考へごとはロッカーに 田畑益弘

父の日

きょうの自選句。父の日のエプロン似合ひ母なき娘(こ) 田畑益弘

お花畑

きょうの自選句。お花畑天近うして人やさし 田畑益弘※季語は「お花畑」。高山地帯の花畑の意だが、あくまでも「お」をつけて使う。単に「花畑」とすると、秋の季語「花野」の傍題となる。気をつけたいところ。

朝焼

きょうの自選句。朝焼褪せ非情の街が起動せり 田畑益弘

月涼し

きょうの自選句。一つづつともしび消えて月涼し 田畑益弘

西日

きょうの自選句。沸点の鯉跳ねあがる大西日 田畑益弘

京の路地

きょうの自選句。水打つて京の夕暮れ京の路地 田畑益弘

雪渓

きょうの自選句。雪渓に花束を置く人のあり 田畑益弘

目高

きょうの自選句。幸福な目高の群を見て帰る 田畑益弘

ヨット

きょうの自選句。むづかしき風をよろこぶヨットかな 田畑益弘

涼し

きょうの自選句。たゞ一机たゞ一硯の涼しさよ 田畑益弘

五月闇

きょうの自選句。面会謝絶五月闇五月闇 田畑益弘

金魚

きょうの自選句。琉金の尾ひれ華とも炎とも 田畑益弘

川床

きょうの自選句。月影の淡き味添ふ川床料理 田畑益弘

山椒魚

きょうの自選句。山椒魚人間嫌ひに徹しけり文明開化厭ひし日より山椒魚 田畑益弘※一句目は三十歳代半ばの作品。故・加藤楸邨先生に入選を戴いた思い出深い作品。二句目は今しがた作ったもの。

牡丹

きょうの自選句。誉め言葉倦むこともなく牡丹かな 田畑益弘

きょうの自選句。ほうたるゆほうたるへ水流れをり 田畑益弘※格助詞「ゆ」は「起点」「経由点」「手段」「比較」を表す。掲句では「〜より」という意味。

緑蔭

きょうの自選句。緑蔭と呼吸合せてをりにけり 田畑益弘

夏燕

きょうの自選句。夏つばめ一途や夕日ある限り 田畑益弘

きょうの自選句。滝となり又滝となり又滝と 田畑益弘

曝書

きょうの自選句。虫干しの度に読み入る手紙かな 田畑益弘