益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

2004-08-01から1ヶ月間の記事一覧

シンメトリー

きょうの自選句。フラミンゴシンメトリーに水澄めり 田畑益弘

秋のこゑ

きょうの自選句。秋のこゑ眸澄みたる者が聴く 田畑益弘

満月

きょうの自選句。満月や憂世の出口開ききる 田畑益弘

ひと世に一度・・・

きょうの自選句。霧の夜のひと世に一度契りしこと 田畑益弘

木々も息吸ふ

きょうの自選句。深々と木々も息吸ふ星月夜 田畑益弘

虫の秋

きょうの自選句。眠るまで身に虫の音を溜めてゐる 田畑益弘

龍を麒麟を

きょうの自選句。天高く龍を麒麟を蔵しけり 田畑益弘

ピエロ

きょうの自選句。ピエロまだピエロのままの夜食かな 田畑益弘

十九歳の時の作より

きょうの自選句。鳴く鹿に小ぬか雨降る宵も来ぬ 田畑益弘※季語は「鹿」。雄鹿は秋季、雌を求めて鳴く。その声は「鹿の笛」と云われわが国の古典文学の重要なモチーフであった。昭和48年十九歳の時の作品。某新聞俳壇で、桂樟蹊子先生の特選を頂き「・・・誠に…

新秋

きょうの自選句。新秋や水平線を見にゆかむ 田畑益弘

星月夜

きょうの自選句。コンピュータ働いてゐる星月夜 田畑益弘

蜉蝣・かげろう

きょうの自選句。あす死ぬる蜉蝣とべり夕山河 田畑益弘※蜉蝣は晩夏から初秋の夕暮れ、水辺に群れて交尾する。そしてすぐに死んでしまう。儚さを象徴する昆虫としてわが国の古典文学に連綿と書き継がれてきた。

秋蛍

きょうの自選句。よべ二つこよひ一つや秋蛍 田畑益弘

一握の砂

きょうの自選句。一握の砂蟻んこをふゝみをり 田畑益弘※「ふふむ」は「含む」のこと。どちらを使っても意味は変わらないが、語感が違う。要するに作者の感覚の問題。「うかむ」・・・「浮ぶ」「しまらく」・・「暫く」などなどそんな例は数多ある。私は、どちらか…

逢ひたきひと

きょうの自選句。走馬灯逢ひたきひとのありにけり 田畑益弘

大文字

きょうの自選句。字頭は亡父金尾は亡母よ大文字 田畑益弘※字頭(じがしら)は「大」の字の頂点、金尾(かなわ)は「大」の三つの字画の交点のこと。金尾の部分が最も太く燃え立ち、字頭がそれに次ぐ。

終戦忌

きょうの自選句。唖蝉のうごかざる壁終戦忌 田畑益弘

いつか一人になる二人で

きょうの自選句。花野行くいつか一人になる二人で 田畑益弘※この句は数年前の作。私自身は、「二人」を恋人同士と想定したのだが、熟年夫婦、或いは老夫婦と解釈することもできる。それは「読み手」の自由。そしてそこが、俳句の面白さ。実際、「熟年夫婦」「老…

人生は

きょうの自選句。人生は永き錯覚蚯蚓鳴く 田畑益弘

茂り

きょうの自選句。憂鬱の鬱といふ字の茂りかな 田畑益弘

不眠なるもの

きょうの自選句。不眠なるものの一つよ雪渓も 田畑益弘

晩夏光

きょうの自選句。少年の蹴る缶からの晩夏光 田畑益弘

長崎忌

きょうの自選句。原爆忌蟻のごと群れ蟻にあらず 田畑益弘

肝試し

きょうの自選句。肝試しすれ違ひしは誰ならん 田畑益弘

かなかな

きょうの自選句。今生のかなかなに耳貸してゐる 田畑益弘

広島忌

きょうの自選句。八月六日くしゃりと卵割り損ね 田畑益弘

蜘蛛の囲

きょうの自選句。東京は巨き蜘蛛の囲かも知れぬ 田畑益弘

向日葵の視線

きょうの自選句。向日葵の視線といふを感じけり 田畑益弘

くれなゐ

きょうの自選句。くれなゐは怨のいろなる金魚かな 田畑益弘

釜の蓋

きょうの自選句。釜の蓋たれが開けたる劫暑かな 田畑益弘