益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

2004-10-01から1ヶ月間の記事一覧

木の実

きょうの自選句。亡き母の服より出でし木の実かな 田畑益弘

糸瓜(へちま)

きょうの自選句。曲がりてより糸瓜おもしろ人生も 田畑益弘

「云ふべけれ」について

きょうの自選句。虫籠の虫の憤死と云ふべけれ 田畑益弘※「・・・べけれ」という語法に質問がよく寄せられるので説明しておく。これはいわゆる「係り結び」の一つ=「こそ・・・已然形」の強調の係助詞「こそ」を省略しているのである。つまり「虫籠の虫の憤死と…

豊作の筈が・・・

きょうの自選句。凶作を綺麗な蝶の舞ふことよ 田畑益弘※台風禍で豊作の予想が一転・・・という今年。しかし、大方の国民は別段困ることもないであろう。「今年の新米は少々高いな」で済む。しわ寄せは、「被災者」という最弱者に集中する。

秋祭

きょうの自選句。狐面つけてまぎれし秋祭 田畑益弘※山口誓子の 秋祭鬼面をかぶり心も鬼を念頭に作句した。誓子句としては異色と長らく気にかかっていた一句なのである。

冷まじ

きょうの自選句。冷まじや紙の葬花の紙の音 田畑益弘

大なゐ

きょうの自選句。大なゐの報に長き夜長き黙 田畑益弘※「なゐ」は地震のこと。黙は「もだ」と読む。

暮の秋

きょうの自選句。たれかれのうしろ姿や暮の秋 田畑益弘

赤蜻蛉

きょうの自選句。赤蜻蛉いよいよ赤し高気圧 田畑益弘

柘榴の実

きょうの自選句。実柘榴の割れたると云ふ吉事かな 田畑益弘

草の花

きょうの自選句。刑務所の門に待つひと草の花 田畑益弘

日本の色

きょうの自選句。日本の色となりたる熟柿かな 田畑益弘※柿は中国、朝鮮でも見られるが、日本で最も発達した果樹とされている。そんな理屈抜きでも「日本の色となりたる」という措辞は感覚的に諾われると思う。

京の七口

きょうの自選句。秋風の京に七口ありにけり 田畑益弘※京の七口

きょうの自選句。放たれし囮のとまる囮籠 田畑益弘

高層街衢

きょうの自選句。墓碑として高層街衢鳥渡る 田畑益弘※「街衢」は「がいく」と読む。「衢」は「ちまた」のこと。「街区」でも良いが、「衢」を使うのが私のこだわり。この字は変換しても出てこない。手書き入力する。

高きに登る

きょうの自選句。天網の疎の紺青へ登高す 田畑益弘※重陽の節句の日、古代の中国では山や岡に登って祝宴を開いた。災難除けの行事。よって「登高、高きに登る」は漢詩によく出てくるが、季語としても使われている。ただし、日本では行事としての実体はなく、…

秋の蛇

きょうの自選句。小栗栖に光秀の藪秋の蛇 田畑益弘※光秀の最期「山崎の戦い」いわゆる「天王山」で秀吉に敗れた明智光秀は滋賀坂本への敗走中、京都山科、小栗栖(おぐるす)の竹薮で土民によって殺害された。その竹薮は「明智藪」として今も伝わっている。

慈照寺銀閣

きょうの自選句。銀閣に銀箔あらず秋のこゑ 田畑益弘※慈照寺銀閣金閣は御存知のように金箔でピカピカだが、銀閣に銀箔はない。なぜか?・銀箔を貼るつもりが財政的事情で頓挫した。・八代将軍義政の死で頓挫した。・元より銀箔を貼るつもりなどなかった。・・…

水澄む

きょうの自選句。大往生水澄むといふことに似て 田畑益弘

弥勒を待ちて

きょうの自選句。入寂以後弥勒を待ちて鉦叩 田畑益弘※弥勒菩薩釈迦の入寂後5億7600万年後(中国の伝承では56億7000万年後)に、釈迦の救いに漏れた衆生救済に現れるとされる。

虚空

きょうの自選句。残りたるきりぎりす鳴く虚空かな 田畑益弘

釣瓶落し

きょうの自選句。キネマ出て釣瓶落しの世にまじる 田畑益弘

秋の潮

きょうの自選句。秋の潮踏み秋の潮引くを見し 田畑益弘

秋の暮

きょうの自選句。鯨の尾没しをはんぬ秋の暮 田畑益弘※敬愛する西東三鬼の 秋の暮大魚の骨を海が引くという歴史的作品を念頭に詠んだ。この三鬼句はその死の二年前に詠まれている。「非情」「虚無的」「言葉の魔術師」というレッテルを貼られていた三鬼の個性…

色鳥

きょうの自選句。色鳥や飽かず眺むる洛外図 田畑益弘※洛中洛外図

掌の中の手の・・・

きょうの自選句。霧の夜や掌の中の手の繊(ほそ)かりし 田畑益弘

胡桃割る

きょうの自選句。太古より胡桃割るなり我も割る 田畑益弘

ピカソの青

きょうの自選句。わが秋思ピカソの青に深みゆく 田畑益弘※私が作句にあたってイメージしたのはピカソ二十歳時の「自画像」である。

秋日和

きょうの自選句。秋日和磨けば光るもの磨く 田畑益弘※「秋日和」は、秋晴のこと。冬季に同様の季語「冬日和」がある。しかし「春日和」「夏日和」とはあまり云わない。「秋晴」「冬晴」に対し「春晴」「夏晴」と云わないのと同じである。

雀化して蛤となる

きょうの自選句。キリコ見てダリ見て雀蛤に 田畑益弘※「雀蛤に」は「雀化して蛤となる」「雀海に入り蛤となる」という秋の季語(陰暦九月の第二候)の省略形。雀の羽根の色と蛤の色が似ていることからこのように言われた。面白い季語である。※