益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

2004-07-01から1ヶ月間の記事一覧

火酒

きょうの自選句。夏痩ていよいよ火酒の旨かりし 田畑益弘

溽暑

きょうの自選句。白熊の汚れてゐたる溽暑かな 田畑益弘

きょうの自選句。あの日の吾は虹を掴みに行つたきり 田畑益弘

涼み人

きょうの自選句。涼み人月のうらがは見たしとふ 田畑益弘※「とふ」は「と云ふ」の略。「ちふ」も「てふ」も同じ。「とふ」が最も古い形、「ちふ」はその転化。いずれも上代語。「てふ」は「とふ」「ちふ」に代わって平安時代より盛んに用いられた。ところが、現代…

鞍馬越え

きょうの自選句。転びしを鞍馬の蟻に見られけり 田畑益弘※三年前の夏、つきあっていた女性と「鞍馬越え」をしたことがある。「鞍馬越え」は私の造語だが、あの鞍馬山の「木の根道」を通って貴船に下りる行程は「鞍馬越え」と呼ぶべきであろう。もともと鞍馬山…

光年

きょうの自選句。端居へと光年の星届きゐる 田畑益弘

きょうの自選句。虫籠の扉にも鍵して睡りけり 田畑益弘

桃青

きょうの自選句。虫干しや桃青などと誰が書きし 田畑益弘※「桃青」とは、松尾芭蕉の号である。わが家にその「桃青」名の短冊がある。贋物に違いない、本物だったら大変である。いつ誰がどこで入手したのか?そして、誰が書いたものなのか?祖父母も父母も亡き今と…

盛夏

きょうの自選句。無人島に人影夏はさかりなり 田畑益弘

邂逅

きょうの自選句。蛇に邂ひ終に神には逅はざりし 田畑益弘

星にも生死

きょうの自選句。涼しさや星に生死のあることも 田畑益弘

きょうの自選句。鮎食うべ六腑ひそかに香りけり 田畑益弘

唖蝉

きょうの自選句。唖蝉のとある墓石に執しをり 田畑益弘※唖蝉とは鳴かない雌蝉のこと。鳴いている雄蝉と同数ほど唖蝉がいる筈である。

落蝉

きょうの自選句。落蝉のみな有終の美とおもふ 田畑益弘

「辻回し」、本物の感動

きょうの自選句。やうやうに意もかなひしか鉾まはる 田畑益弘※メディアにB級C級の感動が溢れている。感動でも何でもないものを感動と呼んでいる。無理矢理感動させられている、という場合もある。演出された感動、強要される感動、にせものの感動。視聴者、観衆は…

宵山そして、明日は巡行

きょうの自選句。鉾まはす裏方の貌佳かりける 田畑益弘※明日は「山鉾巡行」。何と言っても「辻回し」を御覧になられることをお奨めする。千年以上続く最高の夏祭を支える裏方達の自負と自信に溢れた顔が素晴らしい。

祇園会

きょうの自選句。祇園会や亡き人過るいくたびも 田畑益弘

京町家

きょうの自選句。蕗を煮て町家の奥の暗きかな 田畑益弘※「鰻の寝床」と言われる京町家、間口が狭く奥が深い。この句はそんな京都の町家の構造を知っていないと理解できないかも知れない。また、現代のように玄関や窓を閉め切った暮しではこの句自体、成立しな…

朴散華

きょうの自選句。朴散華いつ汚れたる純情ぞ 田畑益弘

糸瓜咲く

きょうの自選句。活断層忘れてをれば糸瓜咲く 田畑益弘

胡瓜

きょうの自選句。まつすぐな胡瓜つまらぬ世となりし 田畑益弘※年中食べられるが美味くない、見た目は綺麗だが美味くない、・・・そんな胡瓜になって久しい。トマトもそうですね・・・。

蝉時雨

きょうの自選句。生きて死ぬそれだけのこと蝉時雨 田畑益弘

花火

きょうの自選句。散骨のたとへば海の花火かな 田畑益弘※昔は、「手花火」「線香花火」は夏季、「花火会」「揚げ花火」は秋季の季題であった。いつしかに、全てが夏の季語として「花火」の中に統合されてしまったが、現在でも実際「花火会」「揚げ花火」は立秋…

炎熱

きょうの自選句。炎熱や髑髏はなべて哄ひゐる 田畑益弘※七月初旬に「炎熱」や「極暑」等を使うのは時期尚早なのだが今年は例外。猛暑の前倒し傾向が年々嵩じてゆくのではないか?と懸念する。

道をしへ

きょうの自選句。山国に御陵のあり道をしへ 田畑益弘※「山国」は、京都府京北町山国という固有名詞なのだが、ここは普通名詞としても通用するであろう。九重桜で著名な常照皇寺の参道に「ハンミョウ」をよく見かけた。「山国」は私の母の里、母郷なのである。

鱧(はも)

きょうの自選句。鱧食べて下卑たる話する勿れ 田畑益弘※東京にいた頃、よく聞かれた。「鱧ってどんな魚?」「どういう風に食べるの?」「どんな味?」・・・。関東では鱧はあまり食べないのだった。関西の料亭では、夏の定番。鱧料理のない料亭はない。祇園祭は鱧祭と…

京扇

きょうの自選句。京扇亡母の好みし香いまも 田畑益弘

海猫(ごめ)

きょうの自選句。海猫群れて海猫の数だけ海猫のこゑ 田畑益弘

シャワー

きょうの自選句。シャワー浴びて東京を流しけり 田畑益弘※季語「シャワー」。古い歳時記には出ていない、新しい季語。シャワーは年中、使用するものだが夏季は最も頻繁であろう。作句例もまだまだ少ない、新しい季語にも挑戦して欲しい。

旱(ひでり)

きょうの自選句。猿山にひと騒ぎあり旱空 田畑益弘