益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

2004-05-01から1ヶ月間の記事一覧

きょうの自選句。苺つぶす団欒ありし日の如く 田畑益弘

私雨

きょうの自選句。あぢさゐのわたくし雨となりにけり 田畑益弘

夏のれん

きょうの自選句。夏のれん一雨来ると女将云ふ 田畑益弘※雨気を孕んだ風に揺らぐ「夏のれん」、その揺らぎ。・・・この景を読む者に想起させられれば掲句は成功ということになります。

夏燕

きょうの自選句。岬にも四五戸住みなす夏燕 田畑益弘

きょうの自選句。汗かきて煩悩ひとつ消え失せぬ 田畑益弘

夕青空

きょうの自選句。水打つて夕青空を引き寄する 田畑益弘

白夜

きょうの自選句。金髪一本シーツに拾ふ白夜かな 田畑益弘

端居

きょうの自選句。絶海の孤島を想ふ端居かな 田畑益弘

人の世は・・・

きょうの自選句。釣りし金魚の言ひ分も聴きたまへ 田畑益弘※先日、当サイト添削担当の松本君と居酒屋で飲んだ時のこと。私が「子持ちシシャモ」を注文して、松本君にも奨めると、彼曰く。「子持ちの魚を頭から齧るなんてかわいそうだよ・・・。」なんと繊細で…

麦酒

きょうの自選句。東山夜も蒼みける麦酒かな 田畑益弘※昨夏は記録的な冷夏でビアガーデンは惨憺たる状況だったようだ。はたして今夏はどうなることやら・・?冷房の効いたビアホールよりもやはりビアガーデンの開放感こそビールには相応しいというものです。

「漢字表記」の問題

きょうの自選句。夜の蟻を夜へ帰してしづかなり 田畑益弘※俳句作者が常に頭を悩ますことに「漢字表記」の問題がある。この句で言えば「しづか」。「静か」「閑か」「寂か」・・・。どう書いても良いが、どう書いてもしっくりしない気がするのだ。そんな時は「…

潮騒(しほさゐ)

きょうの自選句。短夜の窓しほさゐに開きおく 田畑益弘※「潮騒」といえば先ず三島由紀夫の小説を思い浮かべる。三島作品に傾倒していた高校時代に読んだように思う。日本語の美しさに恍惚とした記憶がある。その三島由紀夫は、私の高校二年の時に割腹自殺した。…

破調

きょうの自選句。少年の秘密は納屋にありき夏 田畑益弘※敬愛する西東三鬼の「算術の少年しのび泣けり夏」という高名な破調の一句を念頭に詠んだ。「少年の秘密」とは何か?それは秘密です。

初鰹

きょうの自選句。魚偏に堅と書く魚夏は来ぬ 田畑益弘※ほんとうは「魚偏に青と書く魚」としたかったのである。「青」という語、その方が夏を鮮明にイメージさせるからだ。しかし「鯖」は脂ののる秋こそふさわしいと思い直した。「秋鯖」という季語は「鯖」とい…

五月蝿(さばえ)

きょうの自選句。天井の蝿さかしまに浮世見る 田畑益弘※蝿には、どの足にも吸盤が付いているそうな。だから、重力に抗してでも軽々ととまれるのである。昨日、書き忘れたが「五月蝿」は「さばえ」とも読む。陰暦五月ごろに、群れ騒ぐ蝿のこと、また一般的に…

五月蝿(うるさい)

きょうの自選句。蝿とんで清少納言筆を止む 田畑益弘※実際、清少納言は「枕草子」で蝿の「五月蝿さ」を嘆いている。当時は、今と比べものにならないほど、蝿が跳梁跋扈していたことだろう。「清少納言筆を止む」は私の想像だが、間違いないでしょう。

後戻りなし

きょうの自選句。現し世に後戻りなし蚊遣香 田畑益弘※時間の流れは不可逆である。後戻りすることはない。蚊取線香も我々の一生も。なぜか?宇宙が今も膨張し続けているからだろう。宇宙の膨張は永遠なのか?ある時、収縮に転ずるのだろうか?

交わる

きょうの自選句。赤き蟻黒き蟻ゐて交はらず 田畑益弘※実際に赤蟻と黒蟻は交わらない。種族の保存と生存のためには「交わらない」ことが彼らの最善の戦略だからだ。人類は「交わる」ことを戦略として選んだ。それは人類が蟻よりも優れているから、というのでは…

滴り

きょうの自選句。懸崖の滴りはげし人拒み 田畑益弘※「懸崖」は「切り岸」、断崖絶壁のこと。夏山の清冽な滴りに早く遇いたい。

打水

きょうの自選句。まれびとを迎ふる水を打ちにけり 田畑益弘※「まれびと」は客人、珍客、訪問者のこと。「まらうど」とも云う。料亭やお茶屋では「打水」は「もてなし・接客」のための大切な手段。単に涼を得るためのものではない。

葵祭、今年は土曜日

きょうの自選句。かげろふの中へ去にゆく賀茂祭 田畑益弘※葵祭(賀茂祭)は例年雨に祟られる。順延される年もよくある。ちょうど「走り梅雨」の時分に当っているからだ。だから、この句のような「景」にはなかなかお目にかかることはない。しかし、是非詠んでみたい「…

短夜

きょうの自選句。短夜の女指環を置き忘る 田畑益弘

母の日

きょうの自選句。母の日や遺りてながき鯨尺 田畑益弘※母が亡くなってこの夏で丸七年になる。母のきものや装飾品などはとうに形見分けしたのだが、家にはまだまだ「亡母のモノ」がのこっている。「鯨尺」もその一つ。取っておいても使う訳でもなく仕方ないモノ…

夏日

きょうの自選句。網戸よりわたしの不在わが覗く 田畑益弘

端居して

きょうの自選句。端居して火星に水のありしこと 田畑益弘※先日、米国の火星探査により火星にも水が存在したことが確かめられました。生命の痕跡は?地球の生命の由来は火星にあるのではないのか?などと端居しての空想夢想はキリもありません。

西方

きょうの自選句。西方へ仔猫探しに行つたきり 田畑益弘※「西方」「さいほう」はもちろん「西の方角」ということですが、「西方浄土」という隠れた意味を元々もっています。明日七日は父の命日。

雲龍図

きょうの自選句。天井に龍の眼のある朧かな 田畑益弘※妙心寺法堂、鏡天井禅宗の法堂(はっとう)の天井>の雲龍図を詠んだ一句。明暦2年(1656)、狩野探幽(1602〜1674)55歳の時の作品。詳しくは、http://www.myoshin.com/navi/midokoro-unnryuzu.htm

逝く春の嵐

きょうの自選句。一点となり大いなる青踏みぬ 田畑益弘

ポケットに寺山修司・・・

きょうの自選句。ポケットに寺山修司青き踏む 田畑益弘若い頃、寺山修司の俳句・短歌・詩などをよく読んだものです。しかし、どうしても好きにはなれませんでした。何故だろう?と考えてみました。答えは一つ。やっぱり、田舎臭いから。申し訳ないですが根っ…

壬生菜(みぶな)

きょうの自選句。近藤も沖田も食べし壬生菜とや 田畑益弘※春の季語・壬生菜は水菜、京菜とも云う。新撰組ゆかりの地、壬生は「水生」で、古くから豊かな湿地帯だったようである。「近藤も沖田も食べし・・・」は、先ず間違いないところ。尚、「・・・とや」は…