ほのかな敬意
今年はまことに良いニュースの少ない年だった。
顧みてここに凶事を列挙するのも鬱陶しいくらいだ。
もうすぐ「雅子さま御出産」の朗報がある。
陰鬱で不景気なムードを吹き飛ばして
この年を締めくくりたいものである。
しかし、いつも疑問に思うことをひとつ。
何故「雅子さん」でなく「雅子さま」なのか?
そう言わねばならない、という約束でもあるのか?
皇室の方々には「さま」で、
そこいらの下々は「さん」でいいということか?
「さん」を「さま」と言い換える程度の
「皇室への敬意」ということなのか?
この国のテレビや新聞は実に不思議な態度をとるものだと思う。
「雅子さん、もうすぐでしょ?」
会社でもそろそろ話題の中心になってきた。
「雅子さま」などと言う者はいない。
みんな「雅子さん」と普通に言いつつ、
「ほのかな敬意」を抱いている。
「ほのかな敬意」、これこそが
新世紀の皇室とわれわれ国民との
望ましい関係性だと思うのである。
そろそろ「・・・さま」を卒業したいものだ。
あたゝかき十一月もすみにけり 中村草田男