益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

大寒

昨年はほぼ一年中体調がすぐれなかった。
新年早々、父が入院し生活が激変したからである。
母の死後、何もかも父に任せてきたツケが
回ってきたようなものだった。
五月に父が急逝した。それ以後は
弔事、法事、相続・・・と
代替わりの所用に忙殺された。
俗に「喪疲れ」というが、それを嫌という程
思い知らされた一年だった。
さて今年、ようやく一人の生活にも慣れてきたのだろう、
すこぶる体調が良いのである。
良く眠れるし、食欲も旺盛、
飲めばすぐ眠たくなっていたお酒も
ますます強くなったような気がする。
猫三匹と一人の暮しがやっとのことで落ち着き、
曲がりなりにもやってゆける自信がついたのだ、と思う。

振り返れば、余りにも早く慌しかった一年。
昨年の今頃の心細く陰鬱な気分を、
ふと思い出した・・・。

 大寒の埃の如く人死ぬる  高浜虚子