益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

桜紅葉

日本の春を象徴する桜の花の美しさは
今更言うまでもないことだが、
その桜の紅葉は余り愛でられることはないようだ。
桜紅葉がさほど美しくなく、
他の木々に比べていち早く散ってしまうからであろう。
我が家の桜も既に紅葉を散らしてしまって早や枯木となりつつある。
傍らの楓大樹が未だに紅葉せず緑葉のままであるのに、である。
桜は花も紅葉も潔く早々に散ってゆくのだ。

きょう狭庭で拾った桜紅葉の落葉の写真を次に掲げておく。
真紅に色づいた楓紅葉や櫨紅葉は確かに美しい。
しかし、早々に散ってしまう桜紅葉の落葉には
独特の翳りある美しさが見出されるように私は思う。
こんな色彩は人間技では到底出せないのだから。





 紅葉且つ散る幽明の境かな  田畑益弘