益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

「逆縁」の絶唱

今夜は
私のサイトの常連、
そして「銀河系」の会員でもある、
吉田小夜子様の短歌を紹介しようと思う。
小夜子様の作歌の根源、すなわちモチーフには
ひたすらな「息子への鎮魂」があるのみである。
痛恨の「逆縁」を必死に受け止めた、
彼女の絶唱を是非お読みいただきたい。

{・・・・

2001年10月10日4時35分
下関インタ−で死んだ息子への短歌を集めます。

わが家の金木犀の咲き初めし10月10日息子逝きたり

その朝髭を剃りたる子の顔の夜の棺に眼閉じたり

解剖医の鋭きメスも子の厚き胸に潜める無念を裂かず

己が死の時急がせてその朝アクセル強く踏みし息子か

傷ひとつ顔の残せど安らげるごとくに棺の息子は起たず

起き出でよと棺の息子に声かくる若きら二人三人続きて

27糎の古き黒靴磨きたりこの世に息子の遺せしなれば

花の名も疎かりし子の命日に庭の白梅三分咲きたり
                     
・・・・}

どの歌も荒削りながら
余人には書き得ぬ絶唱になっていると思う。
正直、私は涙を禁じ得なかった。

小夜子様のHPを御訪問下されば嬉しい。
http://homepage3.nifty.com/sayoko-y/

 ふりむけばすべてまぼろし花の道  田畑益弘