益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

初燕

きょうの自選句。

母郷より字も失せし初燕   益弘

※「字」は「あざな」。
母の里、京都府北桑田郡京北町
私の住む京都市右京区編入された。
京都市右京区京北になったのである。
行政の最小区分「字」も消えた。
母が生きていたらさぞ驚くことであろう。

縦貫道路ができて、昔は遠かった母郷も
車で一時間足らずの近郊になった。
景色も変貌した。
水田も藁葺屋根の農家も数少なくなった。
鳶がのどかに旋回していた空には今、
色とりどりのパラグライダーが舞っている。
喜ぶべきか否か、妙な気分である。