益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

群盲、象を評す

例えば「群盲、象を評す(撫づ)」と云う。
私はこの諺(成句)を使うべきではないと思っている。
なぜなら、この諺(成句)が、その意味するところ以前に
障害者への先入見、侮蔑を含意しているからである。
確かに「群盲」は(「象」も)比喩として使われているにすぎない。
岩波国語辞典にも「・・転じて、多くの愚人・・」とある。
(随分、ヒドイ転じ方だ・・。)
また
「諺(成句)は歴史的に広く認められてきた常識だからかまわない。」
という見解もある。
大抵の国語辞典に収録されているところを見ても、この見解は強固だ。
しかし、それを常識と「歴史的に認め」て来たのは我々健常者であろう。
更に言えばその「歴史的」の歴史とは我々健常者の歴史であろう。
私はこのような諺(成句)に潜む含意に対して
健常者はもっと繊細であらねば、と思うのだ。

今日も真夏のような厳しい残暑が続いている。
確か六年前の夏も暑かったな、と父が言う。
そうだったな、と思い出す。
・・・六年前の夏。祖母を亡くした暑く長い夏だった。

 秋の日が終る抽斗(ひきだし)をしめるやうに  有馬朗人