伸びる国
十四、五年前、歌舞伎町を飲み歩いていた頃
クラブやパブに若い中国人ホステスをよく見かけた。
話をすると、みんな素直、こちらの質問に何でも答えてくれた。
彼女たちが日本にまで来て働いている理由を尋ねると、
1、両親への仕送り
2、学資
3、本国の彼との結婚資金
というのが、大抵の返答であった。
そして、みんな真面目で飾ることなく
日本での生活、両親の暮らしぶり、許婚者の境遇を
話すのだった。
私は当時つき合っていた彼女によく言ったものだ。
「中国は伸びる。国民が真面目だから‥。」と。
彼女は達観したように言ったものだ。
「日本人も嘗てそうだったのよ。」と。
中国はやがて携帯電話所有人口で世界一になるそうである。
そして、インターネット接続人口で米国と肩を並べるそうである。
私の漠たる予見は当っていた。
恐るべし、中国。
毛沢東の中国を思い出しつつ
時の流れとその変転に茫然とするばかりである。
夜から雨。よく雨の降る師走だ。
暖冬の証しである。
何ぞ忘年己がオーバー扉(ドア)に挟む 成田千空