益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

父の意識回復

昼前に妹と、父を見舞う。
既に意識は回復していて
元居た一般病棟に移されていた。
「熱い、タオルをくれ」と云う。
「喋ると痛い」と云う。
しゃべると痛いと云いながら、しきりに喋ろうとする。
困った人である。強い人である。
今はまだおとなしく寝ているべき時に違いない。
私たちが居ると喋ろうとするので早々に帰ることにした。
帰り際、「三箇所も切られたぞ」と云った。
父には「食道ポリープに小さな癌がある」としか
伝えていなかった。
末期の食道癌、胃への転移、胃の全摘、といったことは
私一人が聞かされ、私一人が秘めてきた事だった。
今だから話せることである。誠に辛い日々だった。

太陽書房編集部よりメール。
私の拙書「WEB PAGE」(1・2)が電子ブックになる。
詳細は後日、ここに書くことにしたい。

 恋歌のごとく降りゐる春の雪  茨木和生