益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

落花そして楓若葉

我が家の桜は散り尽くして
既に葉桜になってしまった。
身ごろになり、満開になってから
僅か一週間である。
改めて桜ほど季節の変遷、時日の経過を
端的に現す花はないことを実感させる。

そんな桜に代って今
私の眼を愉しませてくれているのが
楓若葉である。
あたかも落花と時を合わせるかのように
この四五日で一気にさみどりの若葉を茂らせた。
その涼しげな緑葉もまた桜花と同じく
旺盛な生命力の象徴である。

汗ばむほどの一日。
あんなに待ち遠しかった春も桜とともに
早や過ぎ去ろうとしている。

 暮の春仏頭のごと家に居り  岡井省二