台風前夜
台風前夜である。
雨戸を閉めるくらいで
何の備えもしていないが
昔と比べて随分と台風を舐めているな、
と我ながら思う。
幼い頃、台風はほんとうに怖かった。
今は、迷惑だな、鬱陶しいなとしか思わない。
窓も屋根も頑丈になり
土砂崩れも洪水もまず心配ないという自らの状況。
いつしか台風への恐怖は限りなく希薄になってしまった。
自然への畏怖の喪失、それは裏返せば
自然を大切にする心の減退そのものだと思う。
怖くもないものを怖がるのを臆病というが
怖いものを怖がらなくなった愚かさを
何というのだろう。
新聞紙踏まれ颱風圏に入る 菅原鬨也