過ぎゆく夏
雨が降ったり止んだりの一日。
涼しくなって既に秋雨の風情である。
夜も更けてきて窓外は早や虫の音が盛んだ。
知らぬ間に夜蝉の声が聞こえなくなっている。
長かった今年の夏にもようやく終りが兆し始め
確実に秋が近づいていることに感慨を覚えざるを得ない。
私にとって今年の夏は
五月七日の父の死で始まったようなものだからだ。
まことに辛く長く暑い夏であった。
一心に鳴く虫の音を聴き澄ましながら
しみじみと父の死を、その永遠の不在を噛みしめている。
死病得し父爽やかにものを云ふ 大槻千佐