益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

水の秋

雲一つ無い秋晴れ。
陽射しは強いが北風が冷たく
爽涼たる一日。
急遽逢うことになった彼女と鴨川の長堤を歩く。
水が澄んで美しい、まさに水の秋である。
のんびりと釣糸を垂れる人の傍らに腰を下ろして
ぼんやりと二人、川面を眺めていると心が癒されてゆく思いだ。
彼女とも話題になった例の「テロ」が
あたかも嘘であったかのように思えてくる。
暫し物情騒然たる世を忘れることができた。

今年は父の入院や急逝で慌しく
これまで彼女と逢う時間をなかなか作れなかった。
これからは彼女と逢うことを中心に
休日の予定を立てるつもりである。
罪滅ぼし、というより
私自身の心のために、である。
やはり彼女と逢うことが
何より私の心を和ませてくれるのがよく分った。

 はるかに光る秋の川来るか行くか  橋本多佳子