ブッシュ大統領という「黒船」

ブッシュ大統領が初来日した。
厳戒下の東京である。
日本人には早や記憶の彼方に去りつつある、
対テロリズムの「新しい戦争」の最中だからである。
今回の日本、韓国、中国への訪問は
米国の今世紀の世界戦略の根底に関わる、
重要な意味合いを持っている。
今世紀における米国の安全保障と経済は
詰まるところ「対中国政策」に収斂する、
と言って過言ではないからだ。

「悪の枢軸」側に中国を追いやっては
米国の戦略は根底から崩れることになる。
また日本経済の凋落は
アジアにおける中国のプレゼンスの増大、つまり
相対的な米国のプレゼンスの減少を意味するのである。

同時テロから五ヶ月余。
強く結束した筈の世界は
早や各々の国益重視に戻りつつある。
ブッシュ大統領は同盟国の箍を締めなおしつつ
今世紀のもう一つの超大国・中国との
適切なスタンス・距離感を模索する腹なのであろう。
米国の外圧(=黒船)でしか動かない日本だが、いよいよ
否応なしに腹をくくる時が来た、と言うべきなのである。

　皆行方不明の春に我は在り　　永田耕衣