ナルの存在
わが家の楓大樹の若緑が美しい。
一昨日、ナルの遺骸はその樹の傍らに葬った。
亡き父が大切にしていた水石や化石を
墓標として置いた。
人間の墓より余程立派である。
遺骸は白布にねんごろに包んだ。
火葬にして小さな骨箱を届けてくれる業者もあるが、
そんな気は、もとより毛頭無かった。
亡骸は、ナルの愛したわが家の内に
埋めてやろうと、当初より考えていた。
我が家にはまだ、ミーとチコという二匹の猫がいる。
ミーは三歳、チコは二歳、
どちらも頗る元気である。
その二匹が、ナルの墓に恐る恐る近づき
しきりに匂いを嗅いでいることがある。
ボスの不在が不思議なのであろう?
ボスの死がまだまだ理解できないのであろう?
土に埋もれてナルは何をしているのか、と
考えているのかも知れぬ?
ミーとチコのそんなあどけない姿を見るのが
とても辛い。
ナルの存在はミーとチコにとっても
余りに大きかったのである。
生涯は一度落花はしきりなり 野見山朱鳥