益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

ナルの思い出・?

ナルは誠に手のかかる猫だった。
水は汲み置きは絶対駄目、必ず蛇口から
垂らしてやらないと飲まなかった。
だから流しの蛇口の一つはナル専用になっていた。

キャットフードを食べない猫だった。
いわゆる「カリカリ」は
一口食べればいい方だった。
好物は刺身、特にマグロ。
焼き魚は、キス・シシャモ・カレイが好きだった。
人間以上の超美食家。
父も母も「贅沢な猫やなぁ・・・」と
溜息まじりによく言っていたものだ。
贅沢にしたのは、当の我々なのだが・・・。

多分ナルは、自らを猫と思っていなかったのだと思う。
我が家でもっとも丁重に扱われる住人、
実際ナルはそうだったのであるから・・・。

暫くナルの思い出を書き綴ろうと思っている。
私の気が済むまで。
ぽっかりと胸に空いてしまった空白が
少しでも埋まるまで・・・。

 想ふこと春夕焼より美しく  富安風生