益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

一生、酒とつき合うために・・・

母が逝った日も父が逝った日も
酒を飲んでいた。
右足首を捻挫した時も
左肘を骨折した時も奥歯を二本抜いた時も
いつものように酒を飲んでいた。
昨夜の日記に書いたように
酒を飲まなかった日を思い出そうとしても
思い出せない。
思い出せない筈なのだ。
一日も欠かしたことがなかったのだから。

その酒を断つことにした。
日記を読んだ彼女が昨夜
「心配」して電話してきた。
「どうかしたの?何かあったの?」と。
どうもしない、何があった訳でもない。
自分一人で決断したことだ。
数年前にやはりアルコール性肝炎になり
医者に断酒を言われた時も私は止めなかった。
人の言うことは聞かない性格である。
結局、私のことはいつも私が一人で決めるのである。

私が今、断酒するのは
一生、酒とつき合いたいからである。
そのためには、今、我慢するしかないと判断した。
それだけである。

 月正視おのれを恃むほかあらず  田畑益弘