益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

山鉾巡行

「コンコンチキチン」に「エンヤラヤー」の掛け声が加わって
十数トンの鉾が軋みながら都大路を曳かれて行く。
山鉾巡行。会社を休むわけにも行かず、時計を気にしながら
「今ごろは御池通りかな」とか「既に帰り囃子の新町通りかな」と想像していた。

「動く美術館」と云われるほど絢爛豪華な装いの山鉾は
実に「ハイカラ」である。
平安時代の国風のイメージとはかけ離れた、
スケールの大きさ・国際性を否応なく感じさせられてしまう。
オリエント文明の粋を集めたような、そんな芸術の塊が
「エンヤラヤー」という実に土着的な掛け声で曳かれて行く、
その「ミスマッチ」に似た感覚に私は酔うのだ。

やはり会社を休んででも見に行くのだったなぁ。
・・・書くほどに後悔するのでこの辺にしておこ。

 東山回して鉾を回しけり  後藤比奈夫