益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

鞍馬から貴船へ

久しぶりに彼女と逢う。
昨年十二月以来だ。
父の入院などで
余裕がなかったせいである。
そこで、かねてより彼女が行きたがっていた、
鞍馬山に登ることにした。
幼い頃に両親と来た記憶がかすかにある程度。
実に約四十年ぶりの鞍馬行である。

鞍馬寺本殿まで登ってきて躊躇う。
山頂まであと100mだが、急峻な山径である。
私は革靴、彼女はサンダル履きのイデタチなのだ。
結局、山好きの彼女の声に押されて
イケイケ、ということになってしまった。

後悔先に立たず、である。
山頂から貴船側へ下山するまで
何度も滑り、蹴躓き、転ぶ。
毎年3000m級の登山を愉しんでいる彼女も
さすがにサンダル履きではキツかったようだ。
彼女ももちろん私も、まさに「膝が笑う」という惨状。
しかし、よく二人とも怪我なく下りて来られたものだ。
後から筋肉痛、腰痛などが出てくると思うが
二人にとって良い思い出となったことは確かだ。

 杉木立涼気丈なす鞍馬かな  水野紀子