益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

五月尽

暫く断っていたウイスキー
また飲み始めた。
父の入院中に、身体が辛くなって
断酒していたのだ。
父の死後、飲まねばならぬ自分に戻ってしまった。
胃や肝臓はとうにギブアップしている。
しかし、酒を飲まないと乗り越えられない
ストレスがある。

独りになった淋しさは
私を抑えられる者のいない
完全な自由をも意味する。
父のいぬ大きな解放感と不安と。
私は私を恐れる。
きょうの新作、

 しがらみなき己(し)が恐ろしき夏の河  益弘

は、そんな気分を詠んだものだ。

昨日来の雨は昼頃上がった。
明日は早や六月。

 青葉闇父の幻そこに冷ゆ  森 澄雄