万緑の候
父が逝って明日で早や四週間が経つ。
慌しく、落ち着く間もない毎日だった。
しかし、徐々にではあるが
父亡き生活にも慣れつつある自分を感じる。
父の遺品を迷わず処分したり
部屋のレイアウトを思い切って変えたりしながら
家中の物理的環境を私好みに整えている。
気分一新には身の回りのモノの環境を変えるのが
近道のように思えるからだ。
父の死後二キロほど体重が落ちたが
これからぼちぼちと取り戻してゆくつもりだ。
きょうも夏本番の暑さ。
家の周囲の緑の伸張が
恐ろしいほどである。
まさに万緑の候。
そんな生生たる夏木立に眼を遊ばせていると
あたかも父の死が嘘であるかのように思われてくる。
ひと一人ゐて緑蔭に入りがたき 飯島晴子