益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

「何一つ変らない人物」

イラクの暴挙」支持する民を想ひをり寝苦しき夜の寝返りのたび

国際貢献」自明のごとく云ふ者の正義に疲るる夜長(よなが)なりけり

1991年1月17日 に始まった、
あの「湾岸戦争」の前年に詠んだ
私の短歌作品である。
(二首とも朝日歌壇に掲載された。)
あれから十二年の年月が経過した。
世界は変わり、私も変った。
アメリカは当時のブッシュ大統領の子息が
今その地位に就いている。
日本を取り巻く環境も大きく変容した。
北鮮の軍事力が現実的問題として
日本と極東アジアの安全を脅かしている。
時代は世界は大きく変った、
そして、私の思想もまた大きく変ったのである。
私は今、米国を主とする断固たる武力行使
全面的に支持している。
世界も日本もそして自分自身も
変れば変るものだとしみじみ思うのだ。
上掲の自作を今あらためて読み返すと
まことに感慨無量である。

ところで、
そんな有為転変の世界にあって
何一つ変らない人物にお気づきであろうか?
十二年前の話を持ち出したのは
実はその「何一つ変らない人物」に
気づいて欲しいがためである。

それは、サダム・フセインだ。

今も昔も独裁者、そして
国際社会の厄介者だ。
この男だけは何と十二年前と
何一つ変っていないのである。

 蛇出でて優しき婆の死を知りぬ  田畑益弘