益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

阪神淡路大震災忌

阪神淡路大震災より九年。
あの朝のことは今でもはっきりと記憶している。
私はあの日なぜか?早起きして
出勤前の朝食を摂り、コーヒーを飲んでいたのである。
父も母もまだ就寝中だった。
私の傍らに愛猫ナルが寄り添っていた。
確かテレビをつけて、早朝のニュースを見ていたと思う。
激しい揺れ、これまでに経験したことのない揺れだった。
父も母も驚いて目覚めたようだった。
「落ち着け!」と父の大声が聞こえた。
動転したが、幸いにも京都はそれだけで何事もなかった。
「只今、強い地震がありました。今のところ被害の情報はありません。」
と、テレビは報じていた。
「大したことはなかったのか?」
と安心して、出勤したのを覚えている。
しかし・・・。
それから後のことは改めてここに書くこともなかろう。

その大震災から早や九年。
光陰の、その容赦なき早さを痛感する。
母が七年前に
父が三年前に
そして、ナルが一昨年この世を去った。
九年前の「きょう」の記憶は
私にとって
別の意味でも極めて大切な記憶なのである。

 寒暁やふつとかの日の地震(ない)のこと  
 何事も起らぬ不安阪神忌         田畑益弘