益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

春雨

春雨。夕刻よりしたたかに降っている。
暖かい雨の春夜である。

不性さやかき起されし春の雨 芭蕉

という句がある。あまり感心しない句だが、
春雨の気分をよく伝えている。

春雨や酒を断ちたるきのふけふ 正岡子規
春雨の衣桁に重し恋衣 高浜虚子

芭蕉の句を軽く超えた二句である。
しかし、芭蕉の感受した春雨の「気分」を
下敷きにしていることが、よくわかるだろう。
芭蕉の偉大さはこの辺にあるのである。

では、私の一番好きな春雨の句を次に。
この句は去年も引用した記憶がある。
それだけ好きな句なのである。

はるさめかなみだかあてなにじみをり 瀬戸内寂聴