益弘 この一句

俳人 田畑益弘のきょうの「この一句」

田畑益弘きょうの自選句「益弘 この一句」

瀕死の一匹はやはり死んでしまった

蟻の飼育器「アントクアリウム」の蟻達のこと。
瀕死の一匹はやはり死んでしまった。
しかし、残る三匹は元気で、頻りに歩き回っている。
時折、集まってミーティングをしているようでもある。
まだ巣作りは始めていないようだ。
これからどのように生きてゆくか?の戦略が
なかなか定まらないのであろう。

無理もないことだ。
女王蟻も雄蟻もいない人工の環境。
働き蟻は全て無性、
働くことだけを宿命づけられているのである。
この三匹も当然、その「働き蟻」なのである。

「指導者」のいない環境でどう生き延びるのか?
それは彼らにとって、最大の難問であるはずだ。
アントクアリウム」の中のジェルは
蟻の生存に必要で十分な空気、水分、食料を
自然に供給するようになっているのだが。

これからも毎日、
私は蟻たちを観察することになるであろう。
働き蟻の寿命は半年ほどだと云う。
「報われぬ生」をこの三匹はどう生きるのであろう。

 またの世へ長き冬眠したまへる  田畑益弘